


紅水の器
毎日が
深淵の闇の奥
暗い青洞
くぐり抜け
無色の己に気づくころ
やがて
辿り着くだろう
現実の枠の中からはみ出して
己の色へと染めていく
架空の水面上へ
ほのかに灯る
紅を残して
2009. 硝子、銅 / 作家蔵
Glass. Copper / The artist

朱濡音
眩しい光に
誘われて
仮面をかぶる 毎日に
孤独を味わう
時がある
静止の時
そっと足を踏み入れる
現実という
枠からはみ出して
夜の露に
赤茶色に濡れていく
深淵の闇の奥
架空の水面上へ
波紋と共に
腐敗する
音を残して
2005. 120 × 200× 250 cm
真鍮、アクリル、 パステル / 作家蔵
Brass . Acrylic , Pastel / The artist
白い錆
奇麗を装う毎日に
少し疲れた日々がある
ふと気がつくと
乾いた空気に
触れている
やがてさまよい続けるだろう
現実という
枠からはみ出して
真白な
無心の境地
架空の水面上へ
わずかに腐敗する
波紋を
残して
2005. 300 × 252 × 238 cm
真鍮、銅 / 作家蔵
Brass . Copper / The artist

三寸指紋
日々積み重ねていくもの
それが、私のとって指紋である
未だ未熟な自分を三寸として見出している
毎日が
指紋のような
空気に覆われる
たった三寸で
どこへ行くの
やがて指紋は
静止する
架空の水面上へ
波紋の枠を
はみだして
2003 . 30 × 190 × 25 cm 真鍮 / 作家蔵
Brass / The artist
水鏡の糸
繰り返される日常
ふと気がつくと 私は覗いていた
現実という 枠の中からはみ出して
夜の水面上に広がる
波紋とともに浮かび上がる 自分自身を
様々な装飾を解き放つ
成熟した 鏡の中に
それは無になる為の大切な場所
私にとっての至高の時
それは無心に返ること
そして自分を素直に映し出す
真夜中の水鏡
2003 . 45 × 171 × 152 cm 硝子、鉄
東京ラヂヱーター製造株式会社蔵
Glass. Iron / Tokyo radiator corporation
English Sound

霧の消息
日々の生活が染まりつつ
無色の己を振り返る
生の意味を問い続け
全ての色が眠る頃
やがて映るだろう
己の色をはみだして
架空の水面上へ
そこは静寂した霧の中
己の色を改めて
曇りの無い色を映し出す
そして繰り返すだろう
わずかに染まる
波紋を残して
2015. 45 × 260 × 125 cm
硝子、銅 / 作家蔵
Glass. Copper / The artist